2015年6月25日木曜日

ドイツの歯科治療


日本の歯科医院の数はコンビニの1.5倍と言われますが、OECDの統計によると、人口1,000人あたりの歯科医師の数は、ドイツが日本を上回っています。

何度も歯科治療に通ったわけではないですが、日本と違う点がいくつかありました。

1.一人あたりの診療時間が長い
これは初診だったからかもしれませんが、カウンセリングや検査の時間がかなり長めに確保されています。

日本だと、働いている人が歯科治療しようとすると、土曜日の午前中か、平日の受け付け終了間際に駆け込むことが多いと思いますが、ドイツの大半の歯科医院は土曜日は開業しておらず、平日も19時には終了という歯科医院がほとんどです。

そうすると、次回の予約を平日の9時とか14時みたいな時刻で指定されることもあるのですが、日本だったら「仕事があるから無理です」といって時刻を変えてもらうところを、こちらでは「では、仕事の融通をつけてきます」という人が多そうです。

そのため土曜や夜に患者が集中しすぎることなく、一人あたりの診療時間が確保できるのかもしれません。

2.治療に入る前に見積書が提出され、合意のうえで治療が始まる
今回驚いたのは、診察の後に、かなり詳細な見積書が作成されたこと。

保険会社にその見積書を提出して、保険の範囲でいくらまでカバーされるか確認し、そのうえで治療を始めるかを患者が決める、とのこと。患者が治療内容に同意する旨を署名した後に、治療が始まります。

これには患者が入っている保険の種類によって、どこまでがカバーされるのかが異なっているため、事前に確認しておくことで、後々のもめごとを避けられる、といった事情もあるようです。

日本で通っていた歯科医院では、口頭で「右上の奥から2本目の歯の詰め物が取れているので、もう一度型をとって、詰め直しますね」くらいの説明しかなく、通院回数や費用は、終わってみるまで分からない、ということが多かった気がします。

それに比べると、最初に見積書を作成し、合意したうえで治療する、というのは、治療を受ける側からすると良い仕組みだなと感じました。


2015年6月23日火曜日

科学ナイト Lange Nacht der Wissenschaften

ミュンヘンにはLudwig-Maximillians University/LMU(ミュンヘン大学)、Technical University of Munich/TUM(ミュンヘン工科大学)という2つの有名大学があり、マックスプランク研究所も本部をミュンヘンに置き、いくつかの個別研究所が配置されています。

こういった大学や研究機関のうち、理系分野を扱うキャンパスや研究所が、ミュンヘンの北にあるGarchingという小さな市に集まっています。Garchingは研究学園都市をうたっており、日本でいうつくばのような感じかもしれません。つくばよりは街中からのアクセスがよく、中心部のマリエンプラッツから地下鉄で25分程度の終着駅に、大学や研究機関が集まっています。

ドイツの大学が学費が無料で、博士課程まで進学すると結構な額の奨学金がもらえる(貸与ではなく、授与)場合も多いようで、税金が使われている研究の成果を少しでも社会還元するためなのか、Lange Nacht der Wissenschaften(科学ナイト)という一般公開が予定されています。

通常は非公開の研究所を開放し、科学者が一般向けに実験や研究の内容を説明する一般公開は毎年行われていますが、今年は土曜日の夜に開催されます。

南ヨーロッパ天文台の地理に設置している天体観測所の様子をライブで見られる、といった企画や、TUMの理学部キャンパスでの化学実験実演など、色々な企画があるようです。






2015年6月21日日曜日

人気のパン屋と食品廃棄


日本に長期滞在するドイツ人に、最も食べたいドイツの食べ物は?と質問すると、「ドイツのパンが食べたい」と答える人が多い気がします。

海外に住む日本人が、ふっくら、もっちりした炊きたてのご飯が食べたい!と感じるのと同じように、ドイツ人は、しっかり、どっしりしたドイツのパンが食べたい!と感じるようです。

確かにパン屋は街中のあちこちにあり、近所にも徒歩圏内に4軒のパン屋があります。多くのお店が毎朝6時とか7時から営業していますが、開店5分くらい前になると、数人が列を作る光景を目にすることもあります。

4軒の中で最も人気があるのが、ホーフ・プフィステライ(Hofpfisterei)というチェーンのお店。
創業1331年で、その昔は王室御用達だった老舗です。

他のパン屋と比べると、ホーフ・プフィステライのパンの価格は10-30%ほど高いのですが、有機農法で栽培された穀物だけを使い、保存料などの添加物を一切使わないという点と、そもそもこのお店のパンは美味しい、というのが人気の理由のようです。

ほとんどのパン屋は夕方18時には閉店しますが、駅前の便利な場所にあるチェーンのパン屋では、かなりの量のパンが売れ残っています。目算では、棚の2~3割を占めるくらいのが売れ残っている印象です。一部は翌日まで残すのかな、と思っていたら、基本的には全て廃棄処分するようで、閉店後に、店員がゴミ袋にどんどんパンを捨てているのを見かけました。

一方、人気のホーフ・プフィステライは毎日、完売に近い状態。家の窓からお店の様子が見えるのですが、閉店後に廃棄される売れ残りはスーパーの買い物袋1つ分くらい。閉店間際までお客さんの流れが絶えないのですが、一方で、18時前に売り切れてしまうこともないようで、仕入れ数をとてもうまくコントロールしているという印象をうけます。


日本でもドイツでも、食料廃棄をいかに減らすか、というのは社会問題の一つです。

捨てられてしまう食料をフードバンクが回収して再分配したり、ドイツでも売れ残ったパンを発電のための燃料に、という動きがあります。もちろんそういった取り組みも、意義があり、社会的に求められている活動だと思いますが、そもそも廃棄の対象になってしまう食品の量を減らすために、企業ができることもあります。

ホーフ・プフィステライのように、きちんと美味しいものを作り、閉店間際には売り切れるくらいのペースで商売をする企業やお店が増えてほしいものです。

2015年6月19日金曜日

Heimatvereinのお祭り


Heimatverein(郷土協会?)という組織のお祭りが、町のホールで開催されていたのを覗いてみました。

Heimatverein(郷土協会)は、地元の伝統を継承しようとする住民の集まりで、住んでいる町では、マイバウムを作って建てるのも、Heimatvereinがやっているよう。

6月のお祭りは、バイエルン地方の民族衣装を着て、夕方に教会に集まって、ミサをして讃美歌を歌い、その後はビールを飲みながら、民族舞踊を披露しあうという流れ。教会の様子を窺ってみようかと思ったものの、あまりにも地元の集まりという雰囲気が強かったため断念。その後のフォークダンスの部を、会場の後ろで眺めていました。

日本でも田舎に行くと、皆で神社にお参りして、お酒をのみながら民謡と民舞を披露しあう、的な催しが残っている場所がありそうですが、Heimatvereinのイベントも地元民による自分たちのためのお祭り、という感じでした。

テーブルについてビールを飲んでもいいよ、という感じで話しかけてもらったものの、その場にいる全員が民族衣装をまとい、フォークダンスを踊る場に入っていける雰囲気でもなく・・・

ミュンヘンのお祭りというとオクトーバーフェストが有名ですが、きっと昔はこんな雰囲気だったんじゃないかと思ったり。今の商業化&観光化されすぎたオクトーバーフェストは、話のタネに一度くらいは行ってもいいけれど、南ドイツのカルチャーを反映した場ではなくなりつつある気がします。


2015年6月17日水曜日

マダニ(Zecken)の予防接種


今さらながら、マダニが媒介する初夏脳髄膜炎(FSME)の予防接種をうけることに。

病院にいけば、接種してもらえるのかと思っていたら、

病院でFSME予防接種ワクチンの処方箋をもらう


薬局で処方箋を提出してワクチンを購入


購入したワクチンを病院に持って行って接種してもらう

という流れとのこと。

病院に在庫があり、その場で接種してもらえたという人もいるので、たまたま在庫が切れていたのか、そのドクターの方針で患者に都度のワクチン購入をさせているのかは不明です。

薬局ではワクチンを購入してから数日後に病院に行く際は、冷蔵庫に保管するように、と言われました。そんなに変質しないワクチンなんでしょうが、そこは自己管理なんだ、ということにも驚きました。

2015年6月15日月曜日

マダニ Zecken の季節


南ドイツ、オーストリア、スイスなどでは、春から秋にかけてマダニ(Zecke)の活動が活発になります。草むらに生息しており、哺乳類から発せられる二酸化炭素の匂いや体温、体臭などに反応して、草の上などから生物の上に飛びうつり、吸血します。

イエダニの大きさは約0.2~0.4mmに比べ、マダニは未吸血の状態でも2~3mm、最大に血を吸っている状態では、通常の体重の100倍から200倍になります。

"マダニ" で検索すると、色々な画像が出てきます。

南ドイツでマダニが媒介する病気としては、ウイルス性の初夏脳髄膜炎(FSME)、細菌感染症としてライム病などが知られています。2014年にドイツでFSMEで病院にかかったのは265人、一方、年間のライム病患者は数万人を超えるという報道も。

FSMEは予防接種ワクチンがあり、この時期になると、自主的な接種が呼びかけられます。1年ごしで、計3回接種するのが推奨サイクルで、2回接種で1年、3回接種で3年程度の効果が期待できます。必須の予防接種ではないですが、学校でも接種を勧められることがあるそうです。発症してしまうと、抗生物質も効かず、対症療法になるとのこと。

ライム病は細菌性なので予防接種はなく、噛まれた後、もし発症してしまったら抗生物質を投与して治療するとのこと。ライム病は適切なタイミングで抗生物質を投与することが大切とのことですが、マダニに噛まれた後10年後に発症することもあり、症状が風邪と同じような感じなので、放置してしまって重症化することもある、との友人談。


身近で、危険性も高いということで、マダニの危険性を周知する情報サイトが開設されています。最も分かりやすいドメインを見てみると、
ドイツ http://www.zecken.de/ はPfizerが、
オーストリア http://zecken.at/ はBaxterが運営しており、
スイス http://www.zecken.ch/ は、チューリッヒの病院か医師が作成しているようです。

ドイツとオーストリアのサイトを運営する製薬メーカーは、FSMEの予防ワクチンを製造・販売しています。自社のワクチンの売上につなげることも目的の一つなので、サイト内でもFSMEの怖さと予防接種の説明が充実しています。

こういうサイトは写真も掲載されていたり、説明文も分かりやすくて良いのですが、疾患の内容によっては、公的な情報源も含め、クロスチェックが望ましい気がします。

2015年6月13日土曜日

建設費用を10年足らずで回収 アリアンツ・アレーナ


日本で国立競技場の整備にかかるデザインや予算が話題になっていますが、ミュンヘンにはバイエルンミュンヘンの本拠地であるサッカー専用競技場Allianz Arenaがあります。

保険会社であるAllianzの名称を冠しているので、FIFAやWEFAが開催する国際大会の際には、Football Arena Munichという呼称になるようです。

2部リーグのTSV 1860 Münchenもここを本拠地にしています。競技場の運営会社はバイエルンミュンヘンとTSV 1860 Münchenが株式を50%ずつ持っていましたが、TSV 1860 Münchenの財政難などを理由に、現在はバイエルンミュンヘンが100%を保有しています。

2005年にオープンしたこの競技場、建設費用は3億4,000ユーロ(約500億円)。この費用を負担したバイエルンミュンヘンは、25年計画の分割で返済していく予定だったのが、わずか10年足らずで完済したとのニュースが。近年の好成績と共に売り上げが上昇したのが要因とのこと。

国立競技場の建設にアリアンツアレーナの5倍以上の建設費をかけた場合、バイエルンミュンヘン並みの超優良経営をしても、建設費用の回収に50年かかることに。公共施設で、サッカー専用競技場との単純比較はできませんが・・・

競技場を覆う特殊フィルムが、バイエルンミュンヘンの試合日は赤、TSV 1860 Münchenは青、国際試合の日は白に光ります。この3色だけかと思っていたら、3月のセント・パトリックデーは緑に光っていました。





2015年6月11日木曜日

100億人 10 Milliarden

ドイツのドキュメンタリー映画 10 Milliarden; Wie werden wir alle satt? を観てきました。

100億人を食べさせるにはどうすればよいのか?というテーマのドキュメンタリー映画で、世界の様々な食料生産にまつわる取り組みが紹介されていました。

Taste the Waste(邦題「もったいない!」)という映画の監督の続編にあたります。

話がそれますが、ドイツ語では、
100  Hundert
1,000 Tausend
1,000,000 Million
と、ここまでは、英語と同じですが、
1,000,000,000 は Billion ではなく、Milliarden、
1,000,000,000,000 は Trillion ではなく、Billion。

紛らわしい・・・。勘違いして、桁を大きく間違えて、後からもめることがありそう・・・


映画では、多くの取り組みが、対照的に取り上げられていました。
印象に残ったエピソードをいくつか紹介します。
(ドイツ語のインタビュー、字幕部分の理解度はかなり低いので、勘違いしている箇所があるかもしれません)


イネの品種改良 と 在来種子の利用
映画の冒頭では、ドイツのBayerによるイネの品種改良の取り組みが紹介されました。「従来の品種よりも収穫量が20%増え、アジアの農家の収入向上にもつながる」と胸をはって説明します。

インドで在来種子の保存と栽培を推進する活動家は、「品種改良された種子は一代限りで、収穫したタネを翌年の栽培に使えない、洪水などが起きた際、在来種は5日間水に浸かっても復活するが、品種改良されたものは栽培を継続できない」といった点を指摘します。



野菜工場 と 有機栽培モデルファーム
日本の野菜工場ではレタスのような葉物野菜が水耕栽培されていて、担当者は「工場として稼働さするためには、コントロールできない要素を排除しなければなりません。様々な微生物を含む土は使えません」とコメントします。

一方で、アメリカのGrowing Powerでは、ミミズがたくさんいる土を育て、野菜の水やりをして土を透過した水を集めて魚を養殖する池に流します。そうすることで、魚の養殖にも役立つという仕組みだそうです。


食肉の培養 と 有機畜産の牧場
オランダのマーストリヒト大学の教授が研究している、牛肉の幹細胞の培養が紹介され、研究者自身がハンバーガーにして食べる場面が。今は研究費込みで約25万ユーロもかかるが、10年後には従来のハンバーガーの値段を下回る可能性もあるとのこと。

ミュンヘン近郊の有機農場Herrmannsdorferでは、穀物類を有機栽培し、家畜の飼料にも有機飼料を与え、チーズ、パン、ビール、野菜、牧畜、食肉加工まで一貫して行っています。ここの肉製品は、少し値段が張るけれど、確かに美味しいです!


モザンビークの大豆畑 と 先進国の街中野菜栽培
モザンビークで荒れ地を大豆畑に開墾し、大規模栽培を行い、欧州での牧畜飼料として販売する会社の社長は「何もなかったところに雇用をうみだし、非効率な農業を徹底的に改善している」と、満足気に語ります。

英国のIncredible Edibleという取り組みは、商業施設の駐車場や学校の校庭、道路脇などの公共スペースの空いた場所に菜園を作り、 野菜やハーブ、果物などを栽培し、住民が自由に収穫できる活動。

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食料生産を工業としてとらえ、規模と効率を重視する取り組みと、身近な生活圏でできることを呼びかけるような取り組み。後者のほうがsustainableで根本的な解決につながる、という印象をもつ人も多いと思いますが、とはいえ現在の食料事情を考えると、前者の取り組みが求められているのも確かです。